「要望の根っこを掘る 」

設計の相談を受けていると、

「こうしたい」「これがほしい」という言葉をいただくことが多くあります。

 

最近特に多いのは、

家事動線や部屋の配置について、

とてもよく考えられた要望です。

 

情報も多く、参考になる事例もたくさんあります。

考え抜かれた間取りを見ると、

住まい手が真剣に暮らしを考えていることが伝わってきます。

 

 

一方で、少し気になることもあります。

 

間取りの話が先行するあまり、

敷地そのものが、まだ十分に読まれていない計画が

少なくないように感じるのです。

 

日当たり、風の通り道、周囲の建物との距離感。

遠くに見える景色や、

敷地に立ったときの、空の広さや圧迫感。

 

そうした敷地が持っている情報は、

図面だけではなかなか伝わりません。

家事動線は、確かに大切です。

けれど、動線だけで暮らしは完結しません。

 

同じ間取りでも、

敷地の読み方ひとつで、

居心地は大きく変わります。

 

朝の光がどこから入り、

夕方の影がどこに落ちるのか。

窓の位置ひとつで、

家の中の時間の流れは変わります。

庭についても、同じことが言えます。

 

庭を設けるかどうか、

広さをどうするか、という前に、

その敷地が、外とどうつながっているのかを考える。

 

建物と敷地を切り離さず、

ひとつの場所として捉えること。

それが、結果的に

無理のない暮らしにつながると考えています。

 

管理が大変そう、使う時間がない、コストがかかる。

理由を聞けば、どれももっともです。

 

でも、その言葉の奥には、

「庭がいらない」のではなく、

「庭とどう関わればいいのかわからない」

という感覚が隠れていることもあります。

設計の仕事は、

要望を集めて整理することではなく、

要望が生まれた背景を、静かに読み取ることだと思っています。

 

言葉にされなかった体験や、

過去の記憶、忙しさ、価値観の変化。

そうしたものが積み重なって、

「こうしたい」という一言が出てきます。

 

その一言だけを頼りに設計してしまうと、

建物は整っていても、どこか腑に落ちない空間になることがあります。

庭についても、同じです。

 

庭を主役にしたいわけではありません。

緑をたくさん入れたいわけでもありません。

 

ただ、ふと視線を上げたときに外とつながること。

季節の変化に、無理なく気づけること。

人が本来もっている感覚を、

建築がそっと支えられたらと思います。

 

それは「庭をつくる」という話ではなく、

どう過ごすかを考えるという話なのだと思います。

建物は、使われ続けてはじめて意味を持ちます。

だからこそ、

今の要望だけでなく、

少し先の時間まで想像しながら設計したい。

 

数年後、

「なぜかこの場所は落ち着く」

「ここにいると、呼吸が深くなる」

そんなふうに感じてもらえる空間を目指しています。

ぐるり設計室では、

答えを急がず、

まず一緒に考えるところから始めます。

 

要望を叶えるためではなく、

要望の根にあるものを、

建築として丁寧にすくい取るために。

 

それが、設計という仕事の、

一番大切な部分だと考えています。

要望の根本を探る。それが、私たちぐるり設計室の仕事です。